被虐待児ですがなにか

生きにくさを抱えた人間の日常。とどけ平凡。

虐待のことを一から十まで覚えているかと言われたらそうでもない。ところどころ鮮烈な記憶があっても、全体には程遠く、それ以上のものを受けていたのだと知っている。日常的に繰り返される性虐待は、数え切れないほどの傷を私にもたらしている。

 

養父は頭のいい人だった。激情型であっても地頭の良さというものはあったとおもう。よく幼い自分と討論じみた言葉を交わしていた記憶がある。私も幼いなりに頭の回る方で、だからいらぬことを言っては養父を怒らせていたのも記憶にある。(そしてだんだん自己の意見を言わなくなるように調教されてしまうわけだが)

意見をいうことは悪いことだ、と、そこで刷り込まれてしまった。
その損害は今もあって、言えないことが直接仕事に影響しているのは筆舌に尽くしがたい複雑な感情だ。嫌な感情だけではないところが複雑で、認めがたい。あの人から受けたトラウマがつながっている一つの縁だなどと、全て断ち切ってしまいたいのに。

人としては別に嫌いではなかった。

された行為が許しがたいだけだ。

 

よく二人で話をした。大半は忘れて……というか、気持ち悪いので覚えようとしていないのだが、それにはあの人の過去の話もあって、哀れな人だったんだなという印象は抱いている。

お互いのことをよく知ろうと交換日記じみたことをしたこともあった。綴られた率直で歪んでどうしようもない醜い愛の形を見せられて、そんなものならいらないと一言返してそれで終わった。ほんとうに、そんなものは望んでいないのだ。ただ普通な親子関係を築きたかっただけ。それだけだったのに。